拝復 御懇書拝誦仕候。其後御家中様愈々御健勝の趣、敬賀の至りに不堪候。小家一同も不安の中にも兎も角無恙消光罷在候。乍他事御放念被下度候。小生〔(出口〕残務漸々終り、過日来各地挨拶の為め他出中に有之一両日前帰宅、御返事延引の段、単に御容恕被下度候。御芳翰の趣平素不変の御懇情深謝に不堪候。已に離職の今日、異地の生活は到底堪へ得す()、帰心矢の如きも如何にせん、職責上遂に其機を失し且つ東京の本拠を失ひ、困厄罷在候次第に御坐候。不敢取居住の問題に付き多大の御配慮を忝し恐縮の至ば べずば べ ばばべじべり、御懇情厚く御礼申上候。坪数の如き差し詰め三、四十坪も有之候へは()何とか足り可申も、只御地分に属し候世態の現況と、将来の生計上の問題を勘考仕るとき、今遽かに多額の支出は今日の処聊か懸念なきを不得、従つ〔小畑敏四郎宛出口芳雄書簡〕一九四六年四月二〇日編者注)て差向は借家止を得されは()一時借間なりとも致し、兎も角帰京の上後途を策するより外無しと覚悟罷在候。其間社会情勢も多少なりとも安定に相向ふへ()くと存候。或は亦□々現状に甘んし()待機すへ()きかとも考ふる等、□(□就去に迷ひ居る現況に有之候。衷情何卒御笑察被下、篤と東都の状態等より御判考承るを得は幸甚に存候。実は小生単身不取敢上京の心算も有之候処、相当期間滞留の為めに相頼るへ()き親縁等も無之、且食料携行等の関係もあり中々意に不委、尚決し兼ね居り候次第に御坐候。顧みれは()一家を挙けて僻遠の地に生死を賭しあとにて決戦の決意罷在候処、状勢急転、今更社会不安に脅かさるゝなと、敗戦の悲哀とは申せ無念此事に存候。旧同僚間にも老境更に仮之住も無之、真に同情すへ()きものも多々有之趣、誠に遺憾の至りに被存候。以上御懇情に甘へ勝なる申状何卒御憫笑被下度、尚今后後格段の御幇助奉願候。北海道の現状は如仰食料特に主食欠配に基く各種社会不安の醸生に有之、食料難は勿論なれは()、主食の外は何結局カ)② 「異人浪人」たちの「敗戦の悲哀」第1節 敗戦直後の不安と動乱317
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