北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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なければならぬ。これは更めて説明するまでもなく、二・一現在では頗る不充分であつた。この点については決して勝ちであるとは云へぬ。五百円の枠及勤労税の取止め、又労働協約の人事権、労働時間の問だい等も直接政治につながるものであるから簡単にカク得できる条件ではないことは初めから考えられたものであつた。又この闘争は我々にとつて切実な問だいであるばかりでなく、他面日本労働者階級全体の解放であり、日本民主化の礎石を据えるものであり、日本再建を急ぐため急速なる政治的決意を行はねばならぬ重大且困難なるものであつた。この困難なる闘争を勝ち抜くため、さきの九・一五及十月闘争の連合闘争及宣伝活動の不充分であつた点を批判し万全の体制を整えて進んだ。その結果は予期せる以上の成果をあげ組織労働者数百万が動員され、その威力の前に現政府の力は物の数ではなくなつた。吉田政府はなすことを知らず、単に労働階級を懐柔するために社会党抱き込みの「連立」工作をやつただけである。それも鎧袖一触で立すくみの形ですべてを放棄し至上権力に委ねてしまつた。かくて我々の要求は表面捨てられてしまつた。このことは労働者の団結の前に反動政府が如何に無力であるかの表現であり、労働者は自らの力を身を以て体験した、日本有史以来の一大成果である。今回の二・一ストの反対論には㈠刻下の国情ではストをやるのは不利である、又破壊である、㈡ストは交渉を有利に展開する威嚇手段に止め、ストはやらない方がよいといふ二つにつきるやうだ。この二つをつきつめると、ストをやるべきでないといふ同じ感情である。このやうな感情は日本の窮迫せる国情に於て一般的な    であるから、スト決行の場合の前提条件である。これを感情であらう。しかしそれと反対に同じ国情からスト断行の決意もでゝくる。これら一切の感情は明らかな事実前提条件として二・一スト決行を決意してばく進したのである。この闘争が激化するに従つて政党や社会の諸勢力は表面上の紛らしい看板がはぎとられ敵、味方をはつ1008第10章 労働運動

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