北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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抗   純兵器生産工場としての永い歴史を持つ日本製鋼所室蘭製作所は、敗戦に因り業種の転換を余儀なくされの中から再出発したのである。吾々組合員も産業の復興は吾々の手でとの合言葉の下に只管企業の立直りを祈念し、一意働き続け、其の事を念願して来たのであるが、テンポの早い経済変動には及ぶべくもなく常に生活の危機に曝され何れも意に満たない儘現在に到つている。此の由来する処は政治の貧困と底の浅い日本経済の中日鋼室蘭争議日鋼室蘭労働組合「日鋼室蘭争議関係資料 争記録 総括編(一)」一九五四年にある企業経営の困難性も諒解出来るが故に度重なる経済要求の度毎に会社の言う「企業の見通しは明るい。今暫くの辛抱を」との言葉に望みを託して忍び難きを忍び働き続けて来たのであるが、会社の放漫なる経営政策と手腕の未熟に基因する企業の行き悩みは年と共に濃厚となり吾々も斉しく憂慮する処であつた。然るに会社は二十八年度下期決算等に於いて赤字を出したを理由に、労働者の大量首切りに拠つて之を切り抜けんとする暴挙を敢へてなさんとしている。温順羊の如き吾々労働組合員と雖も何条之を忍び得ようや怒り心頭に発したのである。方途を見失つた会社の再建の為、足らざるに不平も言わず忍び難を忍び働き続けて来た吾々を、以何に資本主義の中にある営利会社とは言え日本産業復興の為且会社再建の為己れを捨て協力して来た吾々を、自己保身の為、大量の労働者と数千の家族を路頭に迷わすが如き行為は人道上に於いても赦さるべきではないと信ずる。宣敷く再考し真の企業合理化、犠牲なき再建策の樹立を強く要望し抗議する。① 日鋼室蘭労働組合の抗議8 日鋼室蘭争議1014第10章 労働運動  墟 議斗(4) 

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