北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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の地帯の工業地帯としての価値を一変させることゝなろう。つまり、新港の開設があるかないかは、集積する業種を左右することゝなる。すなわち、もし臨海性のないものとすれば、小樽港へ近接することが問題となってくるから、銭函よりに立地する業種が多くなると共に、札幌市の膨脹によって締め出されたものが徐々に国道ぞいに立地していく傾向を強めるから、中央部にまで及ぶことは近い将来に期待することは出来ない。この場合当然に苫蘭地帯との牽引力がどう作用するか問題となろう。今日の立地論は、どのような業種がどこに位置するの   条件を人工的に改変して工業の集積を招来する政策的なが一番有利とするかという問題ではなくて、現状の立地問題といえよう。苫小牧工業港の開設によって工業の集積が促進されると期待する向きが多かったが、もし札幌市にもっと近接していたとするならば、工業の集積する作用はもっと大きかったにちがいない。同工業港には、中小企業への誘引力は決して小さくはないけれども、関連的な集積を起すほどのものではない。いわゆる重畳的集中を起すものは、やはり市場拡大を前提とするのであるから、札樽地域の発展がこの地帯に指向するか、苫蘭地域に指向するかを見究めなければならない。苫蘭地域は、道外との直結性という有利性をもっているし、札樽地域は、至近距離に大市場をもつ有利性がある。東京都という経済力センターに対して品川、蒲田、川崎という工業集積は、苫蘭も札樽も同じ立場で考えてよいが、道内需要に直結することを考えれば、札樽への誘引力が強い。しかも、札樽地域への工業集中傾向は、明らかになっているから、残されている問題は、政策の推進以外にないといってよい。現在、本地帯における宅地造成の現況は、別表〈略〉の通りであって、札幌市への人口集中によって、その傾向をますます強めるといってよいが、工業地帯としての価値のひとつは、地価に左右される。したがって、工業誘致の政策としては用地の先行確保であって、その点では苫蘭地域のほうが有利な条件が多い。しかし、住宅との混在を避ける意味からも、この地帯の土地利用計画を107第2節 経済構造と雇用・人口

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