北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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資料9①は根釧パイロットファーム建設の農地開発機械公団の現地事務所の所長の回顧であり、機械公団、北海道北海道の農業は、農地改革を経て戦後自作農体制の下で、農業近代化を図っていく。日本全体でみると、農業の近代化は高度経済成長のもとで現れた農工間、都市農村間の所得格差を是正するものとして一九六一(昭和三六)年の農業基本法のもとで進められることになる。これに対して、北海道においては農業の外延的拡大が進展を見せる中での近代化であった。戦後緊急開拓の「緊急」が取れて、人口収容という社会政策的なものから産業政策としての農地基盤の整備が本格的に進展を見せる。これが北海道の特殊性である。開発に当たっては、一九五一年の土地改良長期計画のもとで全国的には水田開発を基幹として土地改良事業が実施される。愛知用水や八郎潟干拓などである。こうしたビッグプロジェクトに対し、政府は国際復興開発銀行(世界銀行)に融資のための調査団の派遣を要請するが、世界銀行は水田中心から畑作(畑地灌漑)や草地開発を含む畜産経営の発展を示唆する報告書を公表する。資料8はその抜粋である。紆余曲折はあったが、農林省は乗り気ではなかったにもかかわらず、北海道の根釧パイロットファーム(もう一つは青森県の下北地区)と篠津運河開発が世銀融資を受けることになった。開発局、北海道の三者が連携して実施された事業の苦労を記述している。北海道独自の農地開発公社は日の目を見なかったが、実際の現場での人脈を通じた連携が事業の進捗を可能にしたことが分かる。資料9②は、当時朝日新聞記者をしていた本多勝一によるパイロットファームのルポルタージュである。冬期間の人類学調査団に同行して数戸の酪農家を訪問した記録であり、その実態が赤裸々に記述されている。こうした困難の中から、様々な問題を抱えつつ、155大規模土地改良事業の展開第二節 農業近代化の始動解 説   (1) 

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