ことになつて、地主全体としては次のような数量的変化を遂げた。(第三表〈略〉)即ち、農地貸付は面積の大きい減少、不在地主の消滅にもかかわらず、貸付農家数と農業をしない農地貸付者数は減少しないばかりでなく、むしろ増大さえしている。そして在村地主の経済的内容の変化は、農林省の調査によれば第五図〈略〉のようになつている。即ち、農地改革は在村地主をも零落させたという風聞に反して、彼等の九割以上が村における中等以上の生活程度を維持しており、「その経済力の基礎は、事業収入、俸給収入、財産収入におかれている。改革前からの耕作地主は九割(北海道七割)で、その約二割(北海道一割)は土地取上げ等によつて経営耕地面積を拡大し」改革後耕作を始めたものと合わせると二三%(北海道一八%)が土地取上げ等による拡大を行つている。(第五図〈略〉)2.農 「日本国土の七〇%ちかくをしめ、農業生産にも農民生活にも不可欠のつながりをもつ山林」や原野、牧野などが殆んど解放されず、農民の利用しうる土地は極限されてしまつた上に、内地二反未満、北海道五反未満の零細農家が「自作農として農業に精進する見込」なきものとして解放から除外され、加えて海外からの引揚、復員による土地割込み或は食糧事情の悪化、失業に伴う帰農者の激増等によつて零細耕作は残るというより益々零細化して行つた。即ち五町以上層が激しく減少して、五町未満層特に五反未満の極零細層を激増させている。(第六図〈略〉)一戸当り耕地面積で見ると本道では一六年の四町九反七畝から二四年の三町一反四畝へと縮少している。また農産物の低価格供出制度と重税とは、農民わけて民 積を可能ならしめ、家屋(多くは耐用年限を過ぎていも農産物の自由処分部分を残すことの出来なかつた零細層をいためつけたが、他方自由処分部分を保留することのできた上層に、窮迫せる食糧事情を利用して若干の蓄る)を改新築したり、機械を導入したり、低賃銀を利用して農業労働者を雇傭したりする条件となつたのである。174第2章 農業
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