い。内部の片側は未完成で、仮の工作をしてある。だが、200管理はじつにゆきとどき、清潔である。牛たちは牧柵の中で、雪の上に散らばった干し草を食べている。これが夏ならば、七区に分かれた電気牧柵の中へ、牧草の成長度に応じて順ぐりに牛を入れてゆく。こうした合理的な管理で、上西さんはパ・ファーム営農協議会の牛の品評会に二年連続優勝した。ことしは三年目をねらって、優勝旗をわが家の所有物にする意気だ。次の小野寺さん宅は、床丹第二地区のほぼ中央にある。同じ地区とはいえ、上西さんの家から五キロ余り離れている。「一メートル一万円かかっている」といわれる砂利の舗装道路は立派だが、雪の季節には馬ば橇そかジープでも借りないと日が暮れてしまう。吹ふき雪にでもなれば遭難ものだ。ここは住宅がお手本である。玄関につづく部屋へはいると、デンマークかスエーデンの農家に来たかと思う。部屋の中央はペチカの壁で区切られ、ペチカを境に、一方は勝手場、一方は応接室をかねた食堂だ。勝手場のカ 「かの有名なパイロット・ファー厶とはいったいどんなところなのか」の春別駅を降りて、パ・ファーム営農指導所あたりを訪れたとしよう。いや、視察団でも研究学徒でもよい。見学農場の選択をパ・ファーム関係者にまかせたら最後、かれらは一定のコースをたどらざるをえなくなる。 「まず上西さんの農場ですね。これはまったく酪農の模範みたいな家で、農林大臣も視察しています。それから、皇太子もご覧になられた小野寺さんの家。あと時間があれば、五戸で共同経営している道東農場でも……」時間的にも道順の上でも、このコースはつごうよくできている。見学者たちは、まず床丹第二地区の北部にある上西さんの農場へ。チョビひげをはやした丸顔の上西さんは、説明も親切 ぶり ―いくだし、なれてもいる。見どころは牛である。現在ジャージー種が一三頭。うち七頭もがはらんでいる。牛舎に入ると、壁にはられた一三枚の表彰状が目につく。いずれも牛の飼育に関するものだ。牛舎はけっして贅ぜ沢たではなそんな気持ちの観光客が、標津線第2章 農業
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