3.農家の自発性が阻害されること。農家がある事業を行えば、その代償として補助金が交付されるという形が一般的になると、補助金がなくなれば事業をやめかねないことになり、自主性のない農家ができあがるようになるということであります。以上の点を考慮して、技術の普及については、先ず農家が新技術の効果を納得するまでの期間は、補助金によつて奨励し、その効果は認識されたが、まだ未普及農家が相当数存在し、まだその技術に不慣れであるための危険性が残つている場合は、農業改良資金による奨励を行うようにします。そして、この技術が肥料の施用のように、誰でも普通に行う営農資金と考えられる段階になつたときは、これを普通の系統金融としようとすることであります。第二は国や地方公共団体が補助金や低利の貸付金を交付して、生産力を高めるために奨励事業を行つていますが、農家は単にこのような資金をあたえられただけでは、自発的に経営を改善することは困難な場合が多く、これらの資金が有効に使われるために、普及事業と奨励事業を結びつけることが考えられるようになつてまいりました。即ち、農業経営の改善に必要な資金を供給するという、単なる金融措置にとどまらず、農家に対して必要な技術指導を併せて行うことにより、経営改善を促進しようとするものであります。従つて、改良普及員の積極的な指導の裏打ちがあつて、始めてこの制度の目的が達成されるのであります。このことは、一面からいえば、農業改良普及事業を経済的に裏付ける役割をこれらの融資措置がはたすともいえるでありましよう。いずれにしても、融資措置でありますから農家の自主 性が出発点となつてきますし、この自主的な農家を拠点として、これに必要な資金と技術指導をあたえることが、この制度のねらいとするところであります。以上、農業改良資金制度のあらましを述べましたが、この制度は当初「農業改良普及制度の強化拡充対策」に〈中略〉209第2節 農業近代化の始動
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