北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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待ってほしい〟という未亡人に対して、地価七五万(五までしたという。そういった事業の成果をいかすものとしての〝適正移動対策〟だから、やることも本格的だ。農地を売ろうとするものはまず〝農地等譲渡申出書〟を農業委員会に提出する。希望価格を書き、買手との話がすでについているときは、その名前も書く。その買受希望者が、農地集団化政策上からいって文句のない人なら、農委は一回の会議で可決してしまうが、原則として本会議は一件毎に、あっせん委員をきめる。隣接地所有者が役場に呼び出され、本人、および本人の希望する譲渡あい手をまじえて、あっせん委員会がひらかれる。本人が債務のあるときは、債権者として農協の代表者も出席する。ねだんをいっさい農協にまかせて、本人が出席しないこともある。農協のほうから〝おたくの長年コゲついていた借金も、いま売れば返せるから、売らないか〟といったふうに話をもちかけたばあいに、そういったことがあるのだそうだ。そしてあっせんがまとまったときに、はじめて普通の農地法上の手続がはじめられるのである。いままでなら、〝アレ、あの土地をあんなねだんであんな人に売るのなら、よっぽど買いたかったのに〟と思っても、〝いちど話がまとまってから、こわしにゆくのはとてもやれなくて〟指をくわえていた人たちが、〝役場が話をかけてくれるのだから、話を出しやすくなった〟といっている声も聞いた。隣接地の買受け希望者が買うための現金がなければ、前述した農地取得資金が借りられる。コゲつき債務の整理のため農地が売られるばあいも、農地取得資金としてひきつがれることが多いそうだ。農地の流動化促進が、農協の債務流動化促進にもなっているわけである。離農者I・K氏が十haの土地の過半をひそかに売り、一〇四万円を受け取ってしまってから、農委が譲渡申出書を出させ、全部の土地を一六四万円で売るよう、あっせんし、一度受け取った代価を返させたという例もある。また分家用地として遠隔地を買おうとして、否認され231     ha)にプラスして二年ぶんの純収益十五万を支払うこと第3節 農業構造政策と規模拡大

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