北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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という。高校生の息子は、孝一の後を継ぐといってくれている。孝一は、これからが、酪農家として自立することへの挑戦だと思っている。妻の簿記を参考にしながら……。8 二つの命題〔(一一月五日付記事〕再建指導へ粉骨砕身 組合員が百戸に届かぬ小さな農協。五郎(四一)=仮名=は、営農相談課長を務める。この小さな農協の組合員から、十九戸の酪農家が、五十六年に負債整理対策に入った。十九戸の再建だった。六億円近い総負債十九戸を預かった五郎は、まず、負債額、原因、経営内容を調べていった。過去五年間の資料も、まとめた。一戸一戸を足していくと、総負債額は、五億七千万円にものぼった。一戸平均三千万円。他の組合員に比べ、二倍強の負債を背負っていた。そして、すべてが、毎年の編者注)自費でパソコンも購入し組合長が、彼に命じた課題組勘で赤字を出していた。経営的には、傾きかけた農家ばかりだった。ところが、十九戸の一年間の販売高は、農協の取扱高の五二%を占める。それだけに「何とか、再建させないと、農協自体の経営が成り立たなくなる―」。農協幹部には、そんな危機感もあった。   ―    五郎は、二つの命題を立てた。家計費、経営費を削減し、支出を減らす。個体乳量を伸ばし収入を増やす。新規投資を抑えられた中では、「再建にはこれしかない」と思った。そこで、農業改良普及員二人と、生活改良普及員一人を応援に頼んだ。家計費の詰め方、草地改良、飼養管理を指導してもらうためである。一方で、負債対策農家を夫婦で、農協に呼んだ。「再建のためには、経営状態を夫婦で知る必要がある」。五郎はすべてを、二人の前で説明した。意外に、妻には、支出減らし収入増夫婦を呼んで説明236第2章 農業

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