太平洋戦争後の北海道林業がまず解決すべき課題は、戦時伐採による森林資源の荒廃からの回復であった。資料1は、成長量を超える伐採による森林資源の荒廃について危機感を表した新聞記事である。造林未済地が広大な面積に上っており、一般民有林※での蓄積減少が大きいことが示されている。こうした状況に対して政府は、造林事業を公共投資と位置付け、補助金を提供したほか、森林法に森林計画制度を設けて施業規制の仕組みも導入した。これら対策によって荒廃一般民有林の復旧が急速に進行していく。資料2はこの状況を示した新聞記事であり、急速に造林が進みつつあることと、その背景に社会経済の安定化と施策展開があることが示されている。一方、引揚者を含めた人口吸収と食糧増産が大きな課題となる中で、森林等の農地開発が進められ、林業と開拓の説 間で摩擦が生じた。資料3は、道内林業技術者団体の機関誌である『北方林業』に道林務部職員が執筆した記事である。森林荒廃から復旧が進み、資源を育成しようという時点で、生産力が高く立地条件の良い人工林が開拓の対象となることに林業の立場から強い懸念が示されている。※ 全国的には民有林は国有林以外の森林を意味しているが、北海道では道有林の面積が大きいため、民有林の中でも道有林を別の括りとして、国有林・道有林・一般民有林と区分している。資料1・2・3・12・13・20の文中の民有林は一般民有林を指している。森林荒廃からの復旧と開拓と林業の競合解 第一節 復興期の林業265(1) 解 説
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