北海道現代史 資料編2(産業・経済)
283/1104

た。資料14は一九六〇年代半ばの木材産業の特徴をまとめた、『林』に掲載された記事である。全国に比べて製材工場の規模が大きいこと、また優良天然林を背景に広葉樹材の生産が多いこと、森林資源の状況などを反映して道内の各地において特色のある木材産業が展開していたことが分かる。一方、資料15は道が一九六四年度に行った森林組合に対する調査結果である。林業構造改善事業など森林組合へのテコ入れが始まっていたものの、まだこの段階では活動は低位にとどまっていたことが分かる。一九七〇(昭和四五)年前後には森林をめぐって土地投機や自然破壊が問題とされるようになった。七〇年以降金融緩和等による過剰流動性の増大と列島改造ブームを背景とする投機的な土地需要によって、道内森林が投機の対象とされるようになった。資料16は業界紙が林業の立場からその初期の状況を生々しく伝えた報道である。投資の対象となりそうな森林の所有者が浮足立ち、また投機によって林業の対象となり得る森林が生産対象から外れるなど、林業へ大きな影響を与えていることが示されている。一方、国有林では林力増強計画以降、天然林伐採を進めつつ人工林への転換を行ってきたが、こうした施業に対して一九六〇年代後半から自然保護運動が強い批判を行ったほか、不成績造林地の増大や天然林の劣化など森林の持続的管理の観点からも問題とされ、また国有林の財政状況も悪化してきた。こうした中で林野庁は「国有林における新たな森林施業について」という通達を出し、国有林の施業方針を大きく転換した。資料17は森林計画行政に携わる技術者向けの雑誌にこの方針転換の内容を説明したものである。木材生産以外の多様な機能の発揮に力点を置き、保護森林をめぐる環境問題と政策的対応第三節 環境問題への注目と林業構造の転換269   (1) 解 説

元のページ  ../index.html#283

このブックを見る