北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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3 開拓と林業計画性が持たされたこと、また造林臨時措置法という治山治水上早急に造林しなければならない個所に政府が造林を命じ(この場合造林者はだれでも可)これを怠つた場合は罰則を適用するといつた造林の強制措置が講じられるようになつたことなど政府の積極策による面もあるが、林地がいつ農地買収に引つかかるか分からないという不安が少くなつてきたことや、木材価格が高騰してきて森林経営も一つの企業として採算がとれるようになつてきたことも大きな原因と見られている。とくに林業の採算性については植えるだけ損をするというのが戦後の支配的考え方だつたが三十年後の将来のことまで考えて植林する者がふえてきたことは採算という問題よりもそれだけ精神的にも安定してきたことを立証し、社会安定の一つの証左として注目される。道では今年も三万五千町歩の民有林造林を計画(民有林造林は造林費の四割国庫補助、一割道費補助となつている)、すでに補助金も内定しているので自己資金による造林を含めれば昨年以上の造林面積に達するものと予想されるが、この速度で推してゆけば伐採跡地や山火事を考慮してもあと五、六年で大体民有林は完全に立ち直り国有林や道有林のような正常な経営に復帰できるものと関係者はみている。戦後人口吸収と食糧増産という二大目標を掲げ、農地法によつて未墾地買収が強力に進められてきた。過去における開拓失敗地である国有未開地や、旧軍用地ならびに原野がその対象となつていたあいだは問題はなかつたが、人工造林地や優良天然林が対称()となるに到つてようやく問題化してきた。入殖者の営農がうまく行つているかどうかを論ずることはさておいても、官民挙げて森林復興をさけび鳴物入開拓と林業            北方林業会『北方林業』Vol.八No.九 象    一九五六年九月小林庸秀277第1節 復興期の林業

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