北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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ならなかった。もし、刻印の押されて無い木を切った場合、盗伐として、親方が何倍もの罰金を取られたから慎重にやらなければならなかった。木を伐り倒すとき、まず倒す方向を決め、倒す側にサッテ(柄の長い重さ一貫目ほどもある斧)で受け口を切り込み、その反対側から刃渡り三尺三寸、幅一尺三寸もある大鋸で伐る。直径四尺も五尺もある大木の場合、両側に一人ずつ、真ん中にもう一人入った三人掛かりで同時に切っても邪魔にならないほど太い木もあった。鋸は大・中・小を何本かムシロで造った背し負子に入れ  ょいこ   言った)が付いたもので、窪みの数が多いほど、すなわて持ち運びするが、ギザキザ歯ばかりのバラ目鋸のほか、改良鋸や腰鋸を使い分けた。主に使う改良鋸は窓鋸とも呼ばれ、六枚抜き、四枚抜き、二枚抜きがあった。六枚抜きとは普通の歯六つごとに一つの大きな窪み(窓とち普通の歯が六より四、四より二の方が鋸くずの詰まりが少なく良く切れた。改良鋸はバラ目鋸より数倍切れ味が良く、作業がはかどった。その分、歯は研とぎは難しかった。木を上う手まく倒すにはコツがあり、他の木を傷めないよう気を配って、受け口の付ける位置を考える。受け口の位置によって斜面の下にでも、左でも右でも、三方に倒せるものだ。それは太い木でも細い木でも、同じ技術といえる。山子は、山頭から与えられた仕様書通り切らなければならず、仕様書を頭に叩き込んでから仕事にかかった。でたらめに伐採してすぐ首になった者もいた。請負は採面の当たり場所にもよるが、一日二十石(一石は一尺×十尺、〇・二八立方米)以上は伐った。一本で二十石を越える木もあった。石数を上げれば出面取りの二倍以上金が取れたのはなんと言っても魅力で、気合いを入れて仕事をした。何日も山で生活し働く者が、現場に入っていの一番にやることは飯場を建てることだった。柱穴を掘る者、柱など材料を切り込む者、屋根や壁に長柾を葺ふく者など、役割を分担して手際よく掘っ立て小屋を建てるのだ。284第3章 林業

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