土地ブームによる林地の高騰・投機〈一九六五~七〇年頃〉『北海道民有林新聞』一九七〇年四月一一日〝暴騰する林地〟 山奥が別荘地にブローカー介在して内地ヘ かつて〝ヘクタール一円〟でも買手のなかつた砂地原野が、国立公園の周辺ということだけで、一躍坪数千円にハネ上つた。また、山奥の熊も遠慮しがちな荒廃山野が、美林の茂げる別荘地と称して売りに出された。何がどうなつたのか、最近の林地は内地都市圏を舞台に取り引きされて、びつくりするような値段で流動している。森林をめぐる環境問題と政策的対応造林のブレーキにこのためか、道南道央を中心に林地価は暴騰を続け、点は線となつて北上する気配をみせている。市町村、森林組合にとつて、このわけのわからぬ林地流動は、林業振興の一つのブレーキになるとあの手この手の指導を強化してみても、一向におさまる様子もなく行政庁の適切な対策がのぞまれている。 この五年ほど、林地はかつてない多様な流動をみせている。初期段階の兆候としては、大手会社、商業、サラリーマン層が林地を求めて進出してきたが、いずれの場合でも造林を目的として、将来の経営あるいは生活安泰に備えるものが大半であつた。ところが最近は、別荘地とか森林庭園とか称する、怪 しげな広告によつて転売される、林業目的いがいの林地流動が増え、とくにこの傾向は道南地帯に多い。しかも林地は、土地ブローカーが介在して、東京を中心とした内地都市圏に転売され、熊も遠慮しがちな荒廃山野が一躍美林の茂げる別荘地として、坪単位の高値で売りに出されているというから、北海道の林地はブローカーの喰第三節 環境問題への注目と林業構造の転換316第3章 林業16 (1)
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