国有林野における新たな森林施業についていものに狙われている。あれこれで昨今の〝林地ブーム〟を呼び、会社、商家、医師、サラリーマンの各層から土地ブローカーまで競つて民地に進出、またこのムードを察知した資本家が暗躍するなど、地価は年ごとにハネ上つてきている。だが林業を振興する立場の市町村・森林組合にとつては迷惑千万、造林推進のブレーキにもなりかねないと、躍気となつて対策を検討してみたものの、私有財産であつてみれば、規制するわけにいかない。結局、市町村ならびに森林組合が一旦買い占めるいがいに手だてがなく、洋蹄山麓のある村では、町費予算をもつて流出防止を措置した。また、道警捜査二課は山奥の林地を別荘地と称して売りまくる、悪質土地ブローカーの摘発に、倶知安町等の事情聴取にはいるなど、最近の〝林地ブーム〟は、ますますエスカレートする方向にある。倶知安町森林組合の阿部主事は、「最近、東京の人から〝私の別荘地はどんなところか〟と随分問い合せがある。調べてみると道路もなく、笹かき分けて二日もかかるような避)地だ。それが何んと買手は、美林の茂げる別荘地と思い込んでいるのだから、お話しにならん。とくに後志管内から道南にかけて、林地は異常な値上りをみせている。私有財産であるから売買は仕方ないにしても、その買い目的なるや、単に土地を持ちたい、将来別荘地にしたい、値上りを待つての投資など、林業目的いがいに流動するのだから組合にとつては危機迫まる思いだ。森林所有者は旨味のある話しがあれば一儲けしようと浮動的で、造林推進の歯止めになつている。この事態を放置すれば、森林の所有権は内地に移つてしまい大変なことになる。早急に行政庁の適切な対策が講じられるべきだ。」と、森林組合の危機感を訴えていた。(ママ森林計画研究会『会報』一八六号(民有林新聞社所蔵)一九七二年四月317第3節 環境問題への注目と林業構造の転換17
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