国有林野における新たな森林施業について近年のわが国における経済社会のめざましい発展は、一方において各方面におけるひずみを派生的にもたらした。都市への過密にすぎる人口の集中化、技(革新に伴い高度化多様化する知識を必要とすることからの精神的緊張、生産活動に伴う各種産業公害の発生は、人々の心に自然について考え、親しもうとする要求をより強いものとした。その結果わが国土の六八パーセントを占める森林について、社会的要請はますます高度化多様化する傾向にある。従来森林は木材生産や国土保全、そして水資源のかん養等の機能を通して、社会的要請に答えてきたものである。しかしながら近年は、これらに加えて生態系を通じての動植物の保護であるとか、レクリェーションの場としての機能の発揮についても、社会的要請の高まっているのが実状である。このため国有林ではこれらの要請に応えるため、従来術脱カ)の森林施業に検討をくわえていたが、この四七年二月に渡辺 彬 新しい森林施業の方向を定めて公表した。森林は、木材生産を主とする経済的機能と、国土の保全、水資源のかん養、保健休養等の公益的機能とをあわせ有しており、国有林の施業については、従来からも両機能の調整を図りながら行なってきたところである。しかしながら、森林をとりまく諸情勢の変化は著しく、森林資源に対する国民的要請が、ますます高まっている。このため経済社会の発展に即応し、国有林野における森林がもつ多目的な機能を最高度に総合的に発揮させるよう、新たな方針を定めたものである。新しい方針の基調は、森林のもつ緑の効用を高度に発揮させることとして策定されている。その重点となる三本の柱は次のとおりである。① l.新しい森林施業の方針皆伐する森林を大幅にへらし、伐区をできるだけ小さくするとともに分散させる。(一伐区はおおむね二〇ヘクタールを上限とする。)318第3章 林業
元のページ ../index.html#332