発効に伴いマ・ラインが完全撤廃され、北洋漁業が再開される。資料6は、日本鮭鱒漁業協同組合連合会(日鮭連)の記念誌から、北洋再開の基本方針を示した部分を抜粋したものである。ここでは、北方水域におけるマ・ラインの規制緩和要求が講和条約締結まで一切認められなかった経緯や、北洋出漁を願う関係者の執念にも似た切実な想いが記されている。また、再開当初は水産資源の維持保全を旨とし、二度と掠奪的漁業の汚名を被ることのないよう、十分に自粛と規制を行うという方針が明示されていたことも興味深い。その後、底曳網漁業においても北方水域での新漁場開拓が進められる。小手繰網からの転換が進められた結果、道内の中型機船底曳網漁船は一九五〇年代前半に大きく増加し、沿岸漁業との摩擦を増大させていた。資料7は、そうした中で発出された道水産部の「中型機船底びき網漁業総合対策」である。増加した当該漁船については、禁止区域の拡大、禁止期間の延長、新漁場開発と漁船大型化、及びそれに合わせた隻数削減といった方策が示され、北洋再開とともに底曳網漁業においても転換政策が本格的に推進されたことが読み取れる。高度経済成長期に入ると、沖合・遠洋漁業や陸上産業が急速に発展したこととの対比で、沿岸漁家の所得水準の低さが問題視されるようになる。資料8では、漁家の低所得に関する構造的要因について、過剰人口の堆積、労働市場の狭隘性、漁獲物の販売に不利な市場条件、浅海養殖業の未発達等が指摘されており、この問題に対する基本対策として沿岸漁業の構造改善と近代化による生産性向上の必要性が強調されている。またこのような提言を受けて、道水産部は資料9に示した漁業権切替方針を新たに提示する。沿岸漁業における中小動力漁船漁業の生産力発展を促すた沿岸漁業の構造改善と近代化第二節 高度経済成長期における生産力発展349解 説(1)
元のページ ../index.html#363