め、「漁業協同組合による円滑な共同管理が可能な限度において」共同漁業権漁場の広域化を図るというのがその趣旨であり、沿岸漁業の近代化を推進する道水産部の基本姿勢がそこに示されている。更に資料10に見られるように、北海道開発局は道南の凶漁地帯における沿岸漁業構造改善対策案を具体的に提示している。その中では、漁民やその子弟の他産業従事を可能とするための職業訓練の拡充及び転業助成対策のほか、沖合漁業への転換、新漁法の導入、浅海増養殖の開発といった多様なメニューが示されている。だがこの段階では、構造改善といいながらも本格的な沿岸漁業経営の近代化を見通せる状況ではなく、弥縫的な危機対策を列挙するにとどまっていたというのが実際のところであろう。また資料11は、北海道指導漁業協同組合連合会(以下、指導連と略す。)が策定した営漁指導の手引きである。その中で、構造改善は単なる補助事業への依存ではなく、漁民、漁協が、長期的、総合的な視点から主体的に取り組むべきものであるとしていることや、個別経営の改善を進めるためには、地域全体での生産資源の合理的高度利用が不可欠であるとしていること等は、地域漁業の構造改善を進める上での基本的かつ的確な理念を示したものとして、今日においてもなお重視されるべきものといわねばならない。以上のように、沿岸漁業の構造改善が徐々に進められる中、沖合・遠洋漁業は高度経済成長期に躍進と呼べるような急成長を遂げた。資料12は、一九六〇年に道が策定した中型機船底曳網漁業の漁場転換対策を示したものだが、これによって、「北転船」と呼ばれる大型底曳網漁船が誕生し、カムチャッカや北千島沖の北洋漁場から、スリミ原料となるスケトウダラや切身魚原料となるメヌケ、ギンダラ等を大量供給するようになる。また、母船式に続き、中型サケ・マス流網漁業も高度成長期に順調な成長を遂げている。日ソ交渉によってサケ・マスの漁獲割当量は徐々に削減されたものの、日本経済の高度成長を背景とした魚価の急上昇がこれを支えたのである。沖合・遠洋漁業の躍進と水産加工の高度化350第4章 水産業(2)
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