北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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【主な参考文献】北海道水産部『続北海道漁業史』一九六九年。北海道水産林務部『新北海道漁業史』二〇〇一年。資料24は、指導連が一九九三年に策定した「北海道漁業協同組合合併等基本構想」である。ここでは、漁協の事業総利益の約五〇%を占める販売事業の取扱高が減少傾向にあることや、三割強の沿海地区漁協が事業損益で赤字になっていること等が示され、漁協合併を軸とした組織強化や経営効率化の必要性が強調されている。一九八〇年代後半以降は、沖合・遠洋漁業も縮小再編の歩を速めることとなった。資料25では、一九八六年の日ソ地先沖合漁業交渉における漁獲割当量の対前年比七五%削減(六〇万トンから一五万トンへ減少)や、日ソさけ・ます漁業交渉における同様の割当量大幅削減により、北洋漁業全体が採算性の悪化や大幅減船等の甚大な影響を受けたことが具体的に示されている。また、一九八七年以後ソ連は日本の漁獲割当に有償枠を新設し、米国も「アメリカナイゼーション」という自国漁業重視・外国漁船排除の方針を鮮明にする等、二〇〇海里体制に基づく国際的規制が、一層厳しい新たな段階に移行したことが明確に示された。更にこの期には、もう一つの激変があった。一九八五年のプラザ合意以後円高が急伸し、これを契機に水産物輸入が急拡大したことがそれである。資料26によると、安価な輸入水産物の増大に伴い、それに牽引される形で国内水産物の価格低下が全般的に顕著となっていること、一九九三年にはバブル崩壊後の不況下において円高が一段と進み、水産物輸入量が大きく増加したこと、とりわけ安価な輸入サケ・マスの大量流入によって国産秋サケの浜価格が暴落したこと等が示されている。もちろん、このことは道内のサケ定置網漁業に深刻な影響をもたらし、これまで築いてきた協業化体制にも見直しが迫られる等、新たな沿岸漁業再編の一因となっていく。また、魚価低迷の影響はサケ定置網漁業にとどまらず、本道漁業全体にも影を落としていくことになるのである。沖合・遠洋漁業の縮小再編と水産物輸入拡大の影響354第4章 水産業  (2) 

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