北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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〔窮迫する北海道漁業中井昭〕1 戦後北海道漁業の窮迫的状況〈一九四五~五二年〉戦後の北海道漁業の客観状勢の変化はとくにいちぢるしいものがあつた。その影響と矛盾はつぎの点に要約される。すなわち第一には北洋漁業としての北千島、南千島、樺太などの戦前における広大な漁場を失つたことによることである。またそれとともに、北海道沿岸にも漁業禁止区域すなわちマ─ラインの設定による漁業区域の制限がおこなわれ、とくに根室、稚内の地域は直接の影響を戦後の苦境と漁業制度改革への対応北海道科学技術連盟『技術と社会』六巻四号一九五二年一一月うけたことである。この漁場の喪失と限定はつぎのような影響を与えた。従来の沖合遠洋漁場の制限により、ここを舞台としていた大型漁船は新に漁場を求めて沿岸に侵入せざるを得なくなつた。たとえば東北六県の大型トロール、底曳船がいちぢるしく北海道の沿岸に侵入し、このため毎年の入会協定も無視され、さらに沿岸禁止区域へも侵入していろいろの問題を提起した。このため沿岸漁業資源はさらに枯渇を推進し沿岸窮迫の要素となつた。従来、独占的大資本漁業は工場制工業的漁業を中心にして遠洋漁業、母船漁業を行つていたが、戦争中にますます漁場の不安定を増加するにおよんで、その生産を沿岸漁業にきりかえる方向にすすんだ。北海道の場合、日魯漁業は戦争のはげしくなつた昭和一五年ごろから噴火湾の鰮定置、浜益の鰊定置などへ着漁するようになり、1.沖合大型船の侵入2.大資本漁業の侵入第一節 漁業制度改革と戦後復興355第1節 漁業制度改革と戦後復興        (1) 

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