漁業者の心情として当然のことであり、独立日本の発足に当り、我が国漁業者の世界に誇るべき技術と経験と熱意を充分に活用して資源の開発に貢献し、人口の過多と資源の貧困に苦しむ我が国民経済に能う限り貢献したいということは当局として衷心の希望である。二、しかしながら、一方独立とともに我が国漁業者の負うべき責任もまた極めて重大であって、国際関係の大局に着眼し、水産資源の維持保全のため、協力と自制を必要とすることは勿論のことである。同方面の漁場が米・ソの領海に近接し、またその対象とする魚族が底棲定着性のもの、また溯河性のもので、その資源の保存についてはとくに十分の注意を払わねばならぬものであり、漫然当面の利益のみを事として過去において取沙汰された如き掠奪的漁業の汚名を被り、あるいは領海侵犯その他国際的紛争をまき起すことのないよう十分に自粛と規制を行わねばならぬ。また、それは近く問題となる北太平洋漁業についての日米加協定の正式締結およびこれに続いて関係諸国との漁業協定の交渉を円滑ならしめるためにも至大の関係を持ち、この際、国家百年の大計を誤ることなき様慎重なる行動が必要である。三、当面問題となっているブリストル湾の蟹工船漁業について、許容さるべき工船隻数を、右の見地から検討すると、過去において同方面において二船隊以上が操業した際、反当り罹網尾数が著しく減じた事実に基き、また講和直後の対日感情を刺激することのないよう、この際は一隻の出漁に止め、今後の資源調査の結果により、さらに隻数の増加を許容する資源および漁場が確認された場合はこれを増加することとしたい。 らざるを得ない。協定および当面のソ連邦の動向よりしてその漁場が局限せられ、この方面における過去の試験操業の結果よりしては、未だその漁場価値が明らかとなったとはいい難いので、本年は試験的に操業を許可する方針を採四、以上の前提に立って、本年度北洋漁業の出漁につい鮭鱒漁業については、北太平洋漁業に関する日米加368第4章 水産業
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