8 漁業の基本問題に関する北海道の認識第一 本道沿岸漁業の基本問題本道漁業の構造は、比較的少数の資本制漁業経営を上層とし、多数の零細な漁家経営を下層とし、更にその中間における漁業生産力の相異なる諸階層から成り立つているが、これら階層間の生産性には大きな開差があり、従つて所得の格差もまた著しい。中でも、漁業総経営体数の八〇パーセントを占める沿岸漁家経営の所得水準は、一般的に、極めて低位に停滞沿岸漁業の構造改善と近代化北海道農林漁業基本問題審議会『北海道漁業の基本問題とその基本対策』一九六一年しており、かつ、他産業、特に工業部門就業者との所得格差が増大する傾向にある。このような本道漁業の実体に鑑み、本審議会は、本道漁業の基本問題と基本対策を審議するのに当つて、知事からの諮問の趣旨に基づいて、主としてその対象を沿岸漁業に置き、答申することとした。また、本審議会が審議の対称()とする沿岸漁業については、次のとおり理解することとした。沿岸漁業とは、生産性が低く、従つて、その所得も低位にある階層が主としている漁業、すなわち、家族労働を主体とした小生産者経営が行なう日帰り航海が可能な漁場で操業される程度の規模の漁業をいう。昨年十月、農林漁業基本問題調査会は、総理大臣の諮問に基づいて「漁業の基本問題と基本対策」の答申を行なつた。この答申は、地域的事情をこえた全国的視野に立つて、 象 わが国の漁業構造の底辺に広く存在している漁民層の生活水準の低さと中小漁業、特にその大部分を占める中下第二節 高度経済成長期における生産力発展372第4章 水産業(1)
元のページ ../index.html#386