層経営の不振原因を探究し、その結果に基づいて今後における漁業の基本方向を経済合理性に立脚した漁業の産業としての確立に指向し、そのための基本的方策としては、漁業構造を改善し、漁業の近代化と生産性の向上を推進することが必要なことを示したものである。本道漁業の振興も、基本的には、この調査会の答申に示された方向に沿うべきであるが、漁業、特に沿岸漁業はそれぞれの地域の自然的、社会、経済的条件によつて大きく影響される性格を有しており、全国的に共通した基本的、普遍的なもので満足すべきではないので、それぞれの地域の実情とその要因についての分析を行ない、地域の実体に即した方策について更に検討することが必要である。従つて、本道沿岸漁業における基本問題を明らかにし、そのうえに立つて、これが基本的施策の方向づけを行なうためには、先ず、本道沿岸漁業の自然的、社会経済的な諸条件と、これらのことが沿岸漁業就業者の所得ないし生活水準を低くしていることの関連性について認識することが必要である。1 漁業者の大半を受け入れたため、戦前に比して著しく増大したが、近年本道周辺漁場における資源変動や、漁業の近代化に伴う沿岸漁業の過剰人口が顕在化し、増大する傾向にある。また、一面、本道漁業には従来からの道外労働力依存の雇傭慣習の存在と、沿岸漁業就業者の労働資質の低さのために、過剰人口が容易に道内漁業労働市場に吸収されない実情にある。一方、わが国経済の高度成長のなかにあつて、最近本州では、漁村人口の減少傾向が強く現われているにもかかわらず、本道経済はその後進性と、産業全般にわたる技術革新を土台とする経営合理化の進行等のため、道内産業の労働収容力は他府県ほどには増大していないので、本道漁村からの人口流出力は非常に小さい。本道沿岸漁業における過剰人口は顕著な減少傾向を示過剰人口の存在本道の沿岸漁業者は、戦後樺太及び千島からの引揚このような事情のため、一部特定の地域を除いては、373第2節 高度経済成長期における生産力発展
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