透しつつあるということができます。こうした家庭消費の大幅な増加は、結果として製品在庫を一掃し、品薄感から噴火湾の産地価格は一六〇円まで戻すという好作用を引き起こすところとなっています。しかしながら、ほたて漁業が抱える根本的な課題は依然未解決といってよく、需給環境が悪化した場合、再び産地価格の低下を招く恐れが高いものと考えられますので、最近の需給環境から得られたいくつかの要因をヒントに、この漁業の継続的安定に向けた総合的な戦略を築くことが今後の大きな課題となっています。2 現状認識最近の一連の需給環境の変遷は、ほたて漁業に次ぎのような教訓を示唆したと言えます。① 家庭消費が喚起されれば、全道生産三七万トンでも消費可能。景気低迷、輸出不振というマイナス要因にも拘らず、低価格維持の許容と適確な製品のすみわけができるならば、ほたてがいは全国生産四六万トンでも② ③ 活発な消費流通状況にあり、需給バランスは維持できると言えます。ほたて市場は、需給バランスを適確に反映させる成熟した市場。需給環境の好転は、価格を回復させます。需要のすそ野の拡大、流通ルートの多様化など市場規模の拡大は買い手市場を創出しましたが、同時に、消費地の需給動向を敏感に反映するため、需給バランスを無視した大幅増産は産地価格の低下をもたらすと言えます。いきすぎた価格上昇は、再び産地価格の低下を招くのが必然。ほたては、けっして代替性のない食品ではありません。価格上昇は家庭消費の低迷に直結し、消費地の需給悪化は速やかに産地価格の低下につながると言えます。このように至極当然でありますが、〝川上は消費地にある〟ことをまず認識しなくてはなりません。413第4節 グローバル化の進展とバブル崩壊後の水産業
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