し、その意味で本報告が「道民のためのものとして」報告されると宣言している。資料24は同じ実相報告書のうち産業構造について述べた部分であるが、そこでは産業構造の把握の必要性を強調した上で、北海道の特徴的な点として、①第一次産業が就業人口の過半数を占めているということ、及び②工業発展が全国と比べて低位であることが指摘されている。このようにマクロ的経済分析手法の地域への適応が北海道でいち早く進められたが、その典型が、『北海道経済実相報告書』の分析に先立って総合開発委員会事務局が作成した『北海道道民所得調査結果報告』(資料25)であり、先進的に実施された北海道の道民経済計算作成の経緯が記されている。一方、北海道経済の復興から発展に向けた商工業者の動きを示しているのが資料26である。ここでは「戦時中の軍国主義的、統制経済」から「民主的な自由主義経済」への移行の担い手として自らを位置付けるとともに、法的・組織的・財政的基盤の強化を進めてきたとしている。また資料27は、北海道に特徴的に成立した寒冷地給について述べている。いわゆる「電産型賃金」のようなマーケットバスケット方式による生活給という考え方が、戦後の労使交渉で中心的な論点とされたが、この給与は北海道の寒冷な気候に伴う生活費の増嵩という観点から官公庁・大企業から広がっていったものである。当初は寒冷に伴う必要食糧カロリー、被服、住宅なども含んで考慮されていたが、その後徐々に暖房用の燃料費に集約されていった。たものである。資料28では戦後一〇年間の北海道経済の推移について、戦後混乱期における傾斜生産等による相対的優位、ドッジラインによる停滞、朝鮮特需の波及の限定性、投資・消費インフレと総合開発による活況、金融引き締めによるデフレといった過程として要約している。資料29では、戦前と比較した経済成長の動向を分析している。これによると、戦後北海道の経済成長率は一九五八年までは全国よりも高かったが、五九年以降相対的に低下傾向に資料28と資料29は、ともに経済白書によって終戦後から高度経済成長期までの北海道経済のアウトラインを整理し41 解 説
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