北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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民族健康保持の点からは、将来大都市に対する極端な人口集中を防止し、国土の均等な発展を保障すべき措置が必要であらう。特に我国に於ては、農村が都市の踏み台として殆んど近代文化の恩恵から隔離され、都市と農村が全く異質的な形態を示すに到つた点に鑑み、今後は国土計画の重点を農村に於ける環境の改善にも指向すべきであらう。生産力の基本的培養の見地からは洪水の防止、河川の綜合利用、道路の改善、通信施設及び電力の普及、植林の奨励等の諸施策に重点を置く必要があらう。而して之等の計画は、気象的地理的等自然条件の徹底的探究の上に基礎を置くと同時に、日本の有する経済力を省み、実施の緩急を考慮し、且つ生産、輸送、財政、雇傭等の諸計画と共に一体化された綜合計画の一環として組立てられることが必要である。そのためには中央に国土計画に関する強力な機関を設け、国土並びに経済再建に関する基礎資料の蒐集整理と、それに基く科学的計画の作成に当らしむるべきであらう。又計画の実現を期するためには徹底せる周知方法と法律上、財政上、経済上の各種の方策の綜合的活用が必要である。同時にあらゆる機会をとらへて政府の各部局及び国民一般に其の内容を周知させ、且つ又経済的条件を国土計画の実施を促進する方向に造成することによつて、箇々の決定が自ら計画の線に乗る如き配慮が必要である。尚ほ又当分の間、日本はセメント、鋼材等基礎資材生産の不振と建設資金不足の結果として、大規模な建設事業に着手することは困難であらうけれども、現在から国土計画に関する各種のデータを蒐集し、又測量、地質調査、流量調査、建設材料及工法の研究等の基礎的作業を充分に準備することは智識階級の失業対策としても有効であり、且つ資材の供給が豊かとなつて工事の実施が可能となつた際に、かかる事前の周到な調査研究が莫大な資金、資材、労力の節約を齎すであらう。又日本内地を数箇の地方に分ち、各地方の人口、面積、資源、交通、動力、産業其の他の基礎データを集め、之を地方毎に綜合的に考察してみる必要があらう。其の一47     第1節 地域開発

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