輸送雑記帖札鉄のこのごろ鉄道貨物の輸送難は全国的なことで、別に珍しいことではない。しかし、北海道では津軽海峡で本州と離れているために、いろいろと困つた影響をうけている。昨年末から今年にかけて、近年珍しいほど強風に屢々襲われて青函航路が攪乱されたが、五月からは浮游機雷のために夜間運行が休止され、青函航路は大きな隘路となつた。北海道は大体無蓋車が不足するところであるが、青函航送力が減ずるとこの傾向が著しくなつてくる。特に近頃は州兵の進駐に伴つて有蓋車の航送が旺盛で無蓋車不足に拍車をかけている。札鉄は北海道における空車の発生地帯であるので、最日本国有鉄道『国鉄線』六巻九号一九五一年一〇月近のように本州からの空車の到着が減少して盈着が増すと、非常につらい運用をして、旭、釧両局へ空車を排出しているのだが、奥地からはいろる。まことに割損な立場でもある。わが国の今後の石炭は北海道に期待されるところが大きい。北海道の石炭生産高は今年は千三百五十万屯ともいわれ、昨年より二百二十万屯も増産されるらしい。その出炭の殆ど大部分の約千百万屯を札鉄の管内でうけもつているので、札鉄は益々石炭輸送局としての重責を感ずる次第である。最近は月間百二十六万屯の発送のうち、石炭が八十三万屯で六十六%を占めている。さて石炭で困ることは、海上運賃が高いために小樽をきらつて室蘭へ集まることであり、この傾向は浮游機雷によつて更に著しくなつた。然るに室蘭は小樽に比し陸送距離が約七十粁延びるため相当に石炭車の運用効率を下げるし、又室蘭線には単線があるから筋がうまく入らない。そのため六月からは出炭増に合わせて室蘭向と小石炭と札鉄と文句をつけられ北海道の石炭輸送684第7章 建設業・交通【交通】23 〱
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