樽向との比を約十一対六にしたのであるが、放つておけば更に甚だしくなる傾向がある。出炭状況は輸送屋の立場でみると恐ろしく好調で、毎日あつちこつちから山元のポケットが破れると脅かされるが、夏期にこの調子では今冬が思いやられる。冬期の石炭の凍結は北海道では久しい問題であるが、未だに解決をみていない。洗粉の水切り不良による被害は暖地では道床の劣化位にとゞまるであろうが、北海道の冬には致命的である。凍結粉はツルバシで石炭車の側板をたゝいてもなか三十屯卸りたものが、凍結すると三時間、ときには五時間もかゝる。車輛の破壊も甚だしいし、運用効率の低下も著しいもので、今冬一月には港頭の未卸車四百輛を超える日もあつた。凍結炭の融炭については、かつて融炭設備もあつたが有効に利用されないまゝ放置されていた。今冬は室蘭の融炭庫を改造してコークスの燃焼ガスによつて加熱する方法で試験した結果がやゝ良好であつたので、本年はも落ちない。そのため夏には五分位で一車う少し本格的に設備して行う予定である。しかし、根本的解決は石炭を凍結させないことで、そのためにはおそらく水洗炭の水切りをよくする以外に方法はなかろう。つまり炭礦において積込前に水切りを良くする設備をすることである。しかし炭礦の資金が増産に第一義的に向けられ輸送設備の改良又は増強にはなか〱廻つて来ないことは、炭礦の輸送担当者もなげいているところである。従つて増産と共に水切りはかえつて悪くなる傾向も見受けられる。我々が適正な輸送サービスと運賃との関係を考える時、凍結して運用効率を落し、車輛を破壊し、線路を損ずる水切り不良の石炭も、そんな害のない塊炭も同一運賃で運ぶことには疑問を感ずるし、又この状態ではなか〱水切り設備のよくなることは望めないのではあるまいか。貨車の逼迫した最近は特にこの感を深くする。 〱 最近石炭車(セキ)の速度試験をしたが、七十粁/時を超えて走つても大体よさそうである。しかし運転速度の昻上は石炭の消費量を著しく増した。二百粁足らずの685第1節 復興と輸送
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