北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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9 沙流川水資源問題に関する調査報告書よって、この計画を実施に移そうとする全貌が明らかになったが、鉄鋼は留保するとしても、そのほかの大規模な計画はそのままであり、地域住民が最も不安とする環境保全対策についても、全く納得できるものではない。従って、われわれは、この計画が地域住民の犠牲のもとで、大資本奉仕・公害たれ流しを行なってきた従来の工業開発優先の姿勢と何んら変わるものではないことを見極め、この計画を完全に撤回させるため、地域住民を総結集して、あらゆる反対運動を進めていくものである。きれいな空気、青い海を取り戻し、貴重な自然をいつまでも保存し、人間のいのちとくらしを守るために、関係地域の全住民が反対に立ちあがることを訴えるものである。沙流川水資源対策調査団『沙流川水資源問題に関する調査報告書』一九七六年(北海道立図書館所蔵)1.調査受託の経過苫東工業基地への用水を沙流川水系から供給せしめようとの計画は、数年前から北海道開発局で計画していたものである。このため、開発局は四六~四七年度にその予備調査、四八年度に用地の測量及びダムサイトの岩盤強度の調査を実施している。これらの調査は、「実施計画調査」といわれているので、施工を前提とした調査と考えられる。苫東工業基地の「開発基本計画」によると、五五年度に工業用水は上水道をあわせて一日一〇六万トンとされ、沙流川開発事業は工業用水の供給、洪水調節、発電をあわせ行うという多目的ダムの築造が中心である。このため、宿主別に平取ダム、二風谷に二風谷ダムの建設を予定している。何れも重力式コンクリートダムで、このダムから導水路で用水を工業基地に供給しようというものである。これに対して地元平取町は、「沙流川の水は、今日のはしがき61      第1節 地域開発

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