北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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いる既存のデータをあらゆる角度から再検討して客観的な所見を求めるという方法をとり、社会経済班は独自の実態調査と資料分析をとることとした。要は、技術班にあっては水資源利用そのものの科学調査とその妥当性を検討することであり、社会経済班は水資源利用による地域の社会経済に及ぼす影響と対応について分析と所見を明らかにすることにある。沙流川水系を中心に日高山系を背として「静かなる発展」をとげてきた平取町であり、今後も大きな変動はあり得ないとして町の地元資源と経済地理的な立地を生かした将来計画をたててきた平取町である。しかるに苫東工業基地計画という巨大開発は、否応なくこの静かな町に大きな衝撃を与えずにはおかなかった。必要とする用水を供給するための沙流川水系の開発事業は、直接的にはダム建造周辺地域の水没、農業用水の安定供給に対する不安、町の在来産業へもたらす被害、環境破かいへの懸念などによって住民に動揺をもたらしている。一方、苫東周辺地域の平取町としては、苫東の関連企業の誘致によってこの機会を飛躍のチャンスとしてとらえようとする者、あるいは用地買収による地価上昇をあてこむ者など、過大な期待を寄せる者もある。不安によって動揺する者も過大()期待をかける者も、しっかりした根拠を持って事態を客観的に冷静にうけとめねばならない。このため町は、住民に的確な情報を提供するとともに自らも事態に対応できるようこの問題の科学的・客観的な立場での調査(主として河川工学と地域経済学分野での調査)の必要に迫られたのである。われわれは、かなう限りの分析と調査によって町の求める客観的もしくは第三者としての所見を提言することとした。なお、この調査は、それぞれの専門にしたがって分担      の上調査にあたったが、報告書としては調査担当者全員の共同責任において報告するものである。最後に、この調査にあたっては現地の平取町役場各部各課、町議会、営林署、森林組合、土地改良区、農協、ママ63第1節 地域開発

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