北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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日本標準産業分類には「観光」という産業は存在しない。観光活動には宿泊業や旅客運送業だけではなく、飲食店や各種小売店など多岐にわたる業種・業界が関係し、間接的な取引関係を含めるならば地域経済に極めて広範囲な関わりを持っている。更に取引関係だけではなく、観光による地域間の交流は人的・知的ネットワークの形成などを通じて、ソフト面でも地域発展に大きく貢献する。このため、近年の地域づくりでは「6次産業化」や「地域マーケティング」といった取組の中心軸に観光が位置付けられるようになっている。このように、観光が地域経済にとってかなめの位置を占めるということが広く認識されるようになったのは比較的最近のことである。とりわけ二一世紀を迎え、観光をめぐって幾つかの重要な変化がおきてきている。一つは二〇〇八(平成二〇)年に発足した観光庁も唱道した、いわゆる「ニューツーリズム」の動きであり、従来型の「マスツーリズム」からの転換が論じられている。もう一つは、アジア諸国の所得増加などに伴う外国人観光客の急激な増加である。更に観光の新たな分野として、札幌コンベンションセンターの開設などMICEと呼ばれるビジネスツーリズムが注目されるようになっている。ただし、これらの動きが鮮明に現れてくるのは主に二〇〇〇年代以降であり、本書が対象とする時代範囲を越えている。とはいえ、戦後から高度経済成長期、低成長期、バブル期をへて展開してきた北海道の観光産業の軌跡に、こうした変化の先ぶれを読み取れるであろう。【観 光】【観光】871解 説 

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