北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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会、二〇〇〇年)や『財団法人設立20周年記念誌 どがある。観光におけるアイヌ民族やアイヌ文化の取り上げられ方については、北海道観光における〈アイヌ〉という存在の大きさとともに、観光がアイヌ民族についての社会的な認識に与えてきた影響の大きさに特に注意を払いたい。観光先での経験や見聞がアイヌ文化への理解を深める契機となった場合も見られるが、観光に関わる出版物やガイド・解説の中で、アイヌ民族・アイヌ文化についての事実誤認や偏見が発信されることが長く続いてきた。それだけに、その改善を求める取組が、大きな課題であり続けている。白老出身の森竹竹市(一九〇二~七六)は、詩集『原始林』(一九三七年)などの言論活動で知られ、一九六一年から昭和新山のアイヌ記念館館長を、六七年からは「ポロトコタン」に設けられた町立白老民俗資料館の初代館長をつとめるなど、自ら観光の最前線にも就いた。資料32①の文面には、問題となった「パンフレット」の内容は記されていないが、このパンフレットには、「原始民族」を観覧できる、といった文言が用いられていた。森竹の文章からは、自分たちはあくまで観光のために伝統的な生活文化を再現する施設を営んでいるにもかかわらず、現代の人々までもがあたかも「昔のまま」であるかのような認識を与える紹介がまかり通っていることへの強い批判がうかがえる。「文化対策」として観光におけるアイヌの取り上げられ方の実地検証に取り組んだ報告の前半部分であり、同協会から見た問題点が列記されている。資料32③は、資料32①から二〇年、資料32②から一〇年近くを経た時点での観光ガイドの例である。「明治以後の同化政策」や「近年」の「文化を見直す気運」に触れられるようにはなったが、全体としては専ら伝統的な生活文化が語られるのみという状態が続いている。その後も、アイヌに関わる観光のあり方にアイヌ民族が主体的に参画するための取組は継続され、二〇一九年に公益社団法人北海道観光振興機構が発行した資料32②は、アイヌ民族の最大組織である社団法人北海道ウタリ協会(現公益社団法人北海道アイヌ協会)が自ら二十年のあゆみ』(財団法人アイヌ民族博物館、一九九六年)な876第9章 金融・観光・サービス業【観光】   

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