北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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『アイヌ文化・ガイド教本』はアイヌが多数を占めるワーキンググループが編集し学識者が監修して編さんされている。サービス業は、性格の異なる幅広い業種から構成されている。本項では主に個人向けサービス業を対象とする。個人消費向けサービスを提供する経営体は小零細規模が多いため、あまり資料は残されていない。ただし、宿泊業については、比較的経営規模が大きく、代表的な観光業として行政や組合などによる実態調査が行われ、資料が作成されてきた。そこで、北海道での娯楽や観光を代表する宿泊業を中心に資料を掲載した。これらの娯楽、観光関係の資料によって北海道の歴史の一断面を知ることができる。アジア・太平洋戦争の中で、ほとんどの娯楽業は、営業が禁止されていた。更に、戦後まもなくの間は食料をはじめとする生活必需品の確保が最大問題と認識され、娯楽や観光業の復興は後回しにされた。だが、意外な動きが娯楽業再開の契機を与えた。例えば、GHQ向けの娯楽提供や地方行政の財源としての競馬等のギャンブルへの期待であり、資料33と資料34はそのような事情を説明してくれる。前者は、GHQからの競馬の開催要請に対応した中心人物たちの座談会記録である。解決すべき諸問題が少なからずあったことを示す。ただ、戦前日本の競馬が軍馬の育成という政策課題に直結していたこともあり、競技の常設には慎重な意見もあった。公営ギャンブルの定着には、疲弊した地方財政の救世主として競輪、競馬などの再興が注目されたことが重要な役割を果たした。財政再建を急務とする地方行政にとって、公営ギャンブルとしての公認は現実的な解決策であった。【サービス業】第一節 娯楽業復興の契機877解 説   

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