北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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資料42の座談会で語られている。松尾ジンギスカンは、最初から飲食店であったわけではなく、松尾羊専門店として資料43は一九八四(昭和五九)年の記事であるが、代表的歓楽街であるススキノの空間風景の変貌を物語っている。館業の苦境が語られている。地元企業の運動は、大資本の投資規模を縮小させる成果を上げた。新業態の出現により、街や歓楽街の経済活動が多様化し、その物理的な風景も変貌する。北海道を代表する食としてジンギスカン料理がある。その定着については諸説ある。松尾ジンギスカンは、外食業分野においてジンギスカンを提供する業界を代表する。同社がのれん分けの親睦会を一九六〇年代に結成した様子が、創業した。同社は、めん羊を食材として広めるため、工夫に工夫を重ねて当時の羊肉の臭みを和らげる漬け込みたれを開発した。予想外の人気に後押しされ、一九七〇年代半ばには親睦会に属する約三〇〇店が全道に広がった。これを大都市で本格化する飲食店のチェーン化の先駆けとしてはみなせないが、漬け込み羊肉を仕入れる取引先のネットワークが形作られ、ジンギスカン市場を定着させていったのである。ススキノの不動産業企業がホテル業に進出した事例は、企業自ら見出した需要を喚起して事業として実現したことを示す。『さっぽろ文庫87 すすきの』(札幌市教育委員会編、一九九八年、九〇頁)は、ススキノで遊んですぐ戻れる距離にと、出張ビジネスマンを狙った一〇〇室程度のタイプのホテルが、一九七八年四月のホテルサンフラワー札幌の開業を皮切りに次々と登場したとする。資料にあるグリーンホテルはこれより五年ほど早い。札幌市が調査した一九九二年の「札幌の観光」によると、ススキノ所在ホテルの収容人員は、全市の一般ホテルのうち四五パーセントを占めるまでに成長した。ススキノでの多様な業種の移り変りについては断片的には指摘されているが、体系的な統計や記録による詳細なデ第四節 変貌する歓楽空間880第9章 金融・観光・サービス業【サービス業】    

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