北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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の適用を申請した東海興業㈱(本社・東京都中央区)の件だった。東海興業は、北海道にも地盤を持つ東証一部上場の中堅ゼネコン(総合建設業者)で、バブル期には関連不動産業者に多額の債務保証を行う形で首都圏を中心に不動産開発に注力していた。東海興業は債務保証を乱発することで金融機関からの融資を引き出し、自社の工事受注にもつなげていた。しかし、バブル崩壊による不動産市況低迷の長期化から資金繰りが悪化し、有利子負債が増加、今から四年前の平成五年秋、拓銀を主力とする金融団に初めて金利減免を柱とする支援要請を行っていた。拓銀にとっては、金利減免の大口融資先であったにもかかわらず、同社の倒産後明らかになったのが、前出の不良債権の中にカウントしていなかったことだ。「拓銀側には目に見えず隠されている不良債権がまだあるのではないか」という懸念が最終的に道銀側が合併拒否の決断を下す契機になったことは既に指摘されている通りだ。預金解約が急速に進む両行頭取が合同で合併延期発表を行ったのが九月一二日のこと。大部分のマスコミが実質的な合併解消と見て取った。拓銀側は合併解消は正式には認めないものの、同時に不良債権の前倒しで今期三、五〇〇億円を償却、併せて生損保に対して一、五〇〇億円の増資要請を行うことを明らかにした。また、その後、人員削減、店舗の統廃合を柱とした一段と踏み込んだリストラ案を発表した。計画通りに償却を行った場合、今期の最終赤字は二、九〇〇億円内外が見込まれ、不良債権の処理を弾力的に進めるとともにリストラで身軽になり生き残りを賭けていく姿勢がうかがわれた。この後は表面的には拓銀の独歩行が続いていく。しかし、大手生保首脳の中には出資に対して牽制する発言もあり、「増資に応じるのはあくまでも道銀との合併が前提」(大手生保)という声が出るなど先行きについては極めて不透明感が強まった。また、拓銀の首都圏店舗を中心に預金解約に歯止めがかからず九月以降も、預金残高が加速度的に減少したことも結果的に猶予を与えない形となった。今週の二一日(金)905第2節 北海道拓殖銀行の破綻とその影響 

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