北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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にとって業容拡大のまたとない機会にあたる。しかし、総じて拓銀の抱えていた一部優良顧客先への営業攻勢はあるものの不特定多数への貸付競争は見当たらない。拓銀からの預金の移行については、札幌市内に営業店を置く都銀クラス間でも多少格差が生じているようで「拓銀破綻後に預金残高は急増したが、山一証券の破綻後に減少した」(都銀札幌支店)のように短期間で変動を余儀なくされているところもある。個人預金者も一連の金融破綻にかなり敏感になっている様子がうかがわれる。貸付については「拓銀系列ノンバンクの倒産で焦げ付きが発生したため、札幌地区の事業向け融資は当面静観」(大手生保)という声や「個別企業への貸付拡大というよりも、公共団体としての北海道への貸付枠を拡大し中小企業向け緊急融資に協力していく」(農協系)など対処の仕方は個別様々である。企業に与える影響拓銀破綻は拓銀株を所有している企業へも評価損発生という悪影響を与え始めている。札幌市に本店を置く、家電量販チェーン、そうご電器㈱が発表した九七年九月中間期決算によると、同期の売上高は、個人消費の低迷などから前年同期比一六・七%減の二四一億二、〇〇〇万円で七億五〇〇万円の経常損失となったうえ、所有していた拓銀株七〇万七、〇〇〇株、三洋証券株一九万七、〇〇〇株に評価損が発生したため、最終的な当期損益は二〇億五、一〇〇万円の損失と大幅な赤字計上となった。このほか、道内企業の中にも拓銀株により損失を被っている先が少なからずあると見られ、今後どのような形で表面化してくるかが注目される。年末を迎え、道内企業の倒産は依然として高水準で推移している。既に拓銀系列ノンバンク二社の倒産により今年に入ってからの負債総額は過去最高、総額一兆円を超えている。先立って、石狩市内の機械部品製造業者が札幌地裁に    然の事だった。社長からは何の説明もなかった。昨夕、自己破産を申請した。電話口に出た同社の従業員は「突いきなり弁護士から、財産保全命令が出た旨の連絡が910第9章 金融・観光・サービス業【金融】

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