北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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営業譲渡に至る一連の動きは、本道の金融環境を大きく変動させ、実体経済も非常に大きな影響を受けました。金融機関は、平成九年当初から、一〇年度より導入されたいわゆる早期是正措置に対応するため、貸出金を中心とする資産の圧縮を強めていたものとみられ、本道における金融機関別貸出残高の推移をみると、一部金融機関において貸出残高が減少していました。従って、間接金融に依存する割合の高い本道企業においては、同行の経営破綻前にも、一部に厳しい資金繰り状況が生じていたものとみられますが、本道のトップバンクであった同行の経営破綻はそのような中で生じたことから、企業にとっては、今後も安定的な資金供給を受けられるかどうかという不安だけでなく、現在必要な手元流動性をどのように確保するかといった切迫した問題が、特に同行を取引銀行とする道内の相当数の企業(特に中小企業)において生じたものとみられます。なお、道の「企業経営者意識調査」により、金融情勢に対する企業経営者の意識をみると(第Ⅰ―四―一図〈略〉)、経営破綻から約一年後の一〇年一〇月時点の調査結果においても「非常に不安」と「やや不安」を合わせると八割近くの企業が金融情勢に不安を感じています。金融に関して最も懸案とする問題をみると(第Ⅰ―四―二表〈略〉)、「貸し渋り」が約半数を占めており、業種別には特にサービス業において、金融不安を感じたり、貸し渋りを問題としている割合が多くなっています。また「日銀短観」により、金融機関の貸出態度判断DIをみると(第Ⅰ―四―三図〈略〉)、全国では一〇年三月以降、北海道では九年一二月以降「厳しい」とする企業の割合が増加しており、本道における企業経営者は全国よりも早期かつ深刻に貸出態度につき「厳しい」とみていたことがわかります。同様に、企業の資金繰り判断DIをみると(第Ⅰ―四     の割合が増加しており、本道において全国よりも早期に―四図〈略〉)、本道では九年六月以降、全国では九年一二月以降、各業種とも期を追って「苦しい」とする企業企業の資金繰りが悪化していたことがわかります。912第9章 金融・観光・サービス業【金融】

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