本地帯は、已に国立公園候補地として撰定せられたのでありますので本願理由は多言を要しないでありませうが、本道における文化、商業、工業のそれぞれ中心地たる札幌、小樽、室蘭及び苫小牧の四市に囲まれて、本道中稀に見る幽すい、端麗、清雅、実に言語に絶する仙境に富み、又地質、風土、動物などに学術的研究価値の高いもの多数を擁し、而も気候快適、気流清浄なことは、官民の権威によつて設置せられた国土対策委員会が昭和十六年五月研究調査を重ねた結果、国民厚生地として本地帯を国立公園の最適候補地なりと決裁し、これに基いて国立公園協会長細川護立侯爵から、内閣総理大臣外関係大臣に対し、昭和十七年八月一日建議書を提出せられたのに徴して明なところであります。然るに、当時は国の総力を戦争遂行に結集中でありました関係から、それが国立公園としての指定を見るに至らなかつたものと思料せられたので、急速その御指定を仰ぐべく昭和二十一年第八十九回臨時議会に本願と同主旨の請願を致しましたところ、直ちに御採択を見ましたことは私共の恂に欣幸とし、且つ意を強ふしたところであります。今日における国立公園の方針に関し世局の推移に鑑み 内に建設された進駐軍の住宅街の関係から考ひても日をて考慮せらるべきことは、昭和十年に全国十二ヶ所の国立公園が指定せられた当時に比し相当その趣を異にし、国民大衆の利用度と外客が容易に観光し得る個所という点に重点を傾けなくてはならないと思はれます。本地帯は人口二十六万余の札幌市、十六万の小樽市、十万余の室蘭市、三万余の苫小牧市並びに本区域内及周囲の人口約五十万人(石狩、後志、胆振各支庁管内)の厚生地として利用せらるゝ計りでなく、いやしくも踵を本道の中心部に入れる人は勿論、道外から来往する人々は必然的にこの名勝を訪れ得るのみでなく、札幌近郊にある真駒遂うて諸外国人に利用せらるゝことは必然のことと思われるので、外客誘致の点から見ても、将又政府今日の人口政策乃至本道開発政策方面から見た本道の重要性から致しましても、本願の御指示は必須の事柄であると確信第9章 金融・観光・サービス業【観光】918
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