北海道現代史 資料編2(産業・経済)
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〈衣 服〉木綿などの織物が出まわる以前は、カモ、鵜、熊・鹿・キツネ・アザラシ、サケ・鱒といった鳥獣魚皮、それに草・樹皮などの天然繊維が材料として巧みに利用されていた。代表的なアイヌの民芸品として知られるアツシは、ニレ科のオヒョウの繊維を織ったものである。伝統的な衣服は、男女によって形の違いは見られないが、一般的に、男物の方が模様が多く施されている。〈食 事〉朝・夕二食で済ますのが普通で、クマ・鹿・サケ・鱒などの獣や魚の肉に山菜や野菜を入れた塩味の汁を主食とし、ヒエやアワなどの穀類にかなりの量の水を加えた粥を副食としていた。祝祭時には、ヒエ・アワ・キビの飯、ヒエ・アワの濁酒や団子も作った。〈住 居〉屋根は草葺、ゴザを敷きつめた長方形の部屋が一室だけで、部屋の中央には食事や団らんの場である炉が設けられている。そして東側に一つ、南側に〈宗 教〉天地万物すべてのものに精霊が宿ると考え、汎〈文 学〉アイヌは、すべての記録を口承によっており、二つの窓があって、東の窓を神窓といい、この窓のすぐ外、正面にヌサ(祭壇)があり、クマの檻が近くに置かれた。これがアイヌの典型的なチセ(家屋)の構造である。炉の回りには席次があり、神窓を背にして右側の上座に主人、下座に主婦、左側には家族、神窓を背にした席には特別な賓客が座るしきたりであった。神的な信仰をもっていた。その根底には自然を大切にする考え方が流れており、また神と人間は対等と考えていたところが特長的である。巫ふつ術や呪法も行われ、善神や悪神に対する宗教儀礼は、漁撈・狩猟の生活文化を反映したもので、クマやサケの祭りのように、他の漁狩猟民族にも同様にみられるものが少なくない。代表的な文学である神話・伝説・物語・民話なども、すべて口で語り伝えられてきた。なかでも、英雄叙じゆ第4節 観光とアイヌ民族  953

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