における「長欠児」が二・八%、中学校では六・八%に及び、高等学校進学率は四二%にとどまる、とした。同書は、「一般地区」の高等学校進学率は六二・八%であるとし、小・中学生の長欠児童の割合も、全道平均と比べ「ぐんと跳上がっている」とする。一九七〇年代から北海道が実施した、道内に居住するアイヌの人々を対象とした生活支援事業である「北海道ウタリ福祉対策」においても、高等学校及び大学への進学支援事業はその主要な柱であり続けた。高等学校や大学への進学率が全道平均に比肩するに至るのは一九九〇年代以降のことである。第二に、学校におけるアイヌ児童に対する差別や迫害、偏見の多さと、その根強さがある。この問題の困難さは、差別や偏見は、いわゆる和人の生徒やその保護者のみならず、しばしば、和人の教員や教育行政関係者にも存在したことにある。前掲『北海道旧土人集落地区の概況』が、児童の長欠率の高さを指摘し、「これは家業の手伝等によるものが多く」と、その主因が家庭の生活条件にあることを認めつつも、これに続けて「父兄の教育に対する関心を高める必要があろう」と、その打開の方策を保護者の「関心」に求めていることにも、こうした周囲の認識の一端が露呈している。そうした偏見の打破や教育格差の解消に取り組んだ関係者もいたが、社会的な理解は多年にわたって極めて不十分であり続けていることは、資料7が報告する教員を対象にしたアンケートの結果に明白に示されている。このような背景からもうかがえるとおり、本章が対象とする教育を巡る諸問題について、特に一九六〇年代ごろまでのメディアの報道や教育関係者による文章、更には公的な報告書には、こうした偏見を反映した物言いや、論述・報告の対象となった人々の尊厳を著しく損なう文章、プライバシーを侵害する記述が頻出する。したがって本章では、本来であれば当時の教育実態を伝える資料を掲載すべきところ、これらの資料のほとんどについて掲載を見送った。本書には、あえて掲載しなかった資料群があること、それ自体が本章の主題である現代北海道の教育の問題の所在を物語っている。第三に、これは第二の点とも関わることであるが、日本の教育におけるアイヌ民族の歴史と文化に対する理解の不1024 第2部 教育 第9章 アイヌと教育
元のページ ../index.html#1040