北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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が奨励され、国内でも、「アイヌ文化振興法」の制定等の動きが起こるに至った。そのような中、教育においても、学校教育における理解の促進や、アイヌ民族が自らの言葉や文化を学ぶ機会の回復とその支援の必要を唱える声が増え、国・市町村の取組や、アイヌ民族自身の活動などが徐々に広がるに至った。が国際先住民年記念事業として実施した教育を考えるシンポジウムの報告を経て、その後札幌市の市民学習団体(現NPO法人)「さっぽろ自由学校「遊」」が主催した講座に基づくものである。ここでは、一九九〇年代初頭の、社会科等の教科書がアイヌ民族の歴史と文化に関する記述を充実させることが求められるに至った中で、実際に記述内容・記述量の拡大が見られることを認めつつ、基礎的な事実認識における過誤とともに、いわゆる多数者中心意識に基づく記述が根強く残ることなどの問題が指摘されている。学校教育の充実のためには、教科書や教材の整備と、それらを使って教えることのできる人材育成や研修が必要であり、さらには、そうした教科書・教材をつくり、教員養成の場において学生を指導できる人材と体制を構築する必要がある……という、社会の構造そのものを着実に積み上げる必要が示唆されている。興・研究推進機構(現公益財団法人アイヌ民族文化財団)が、設立当初から取り組んだ事業の一つである、アイヌ民族の歴史と文化に関する小・中学校向け副読本の編集事業によるもので、教師用指導書に記された編集方針からの抜粋である。ここでは、資料9とも通じる視点から、当時の学校教育や生涯学習における教材やそれらの編集方針の問題点を指摘し、それらの克服を目指すべきことが示されている。この資料をはじめ、本章で取り上げた資料は、今もそれぞれに、本書の編さん・刊行時点である二〇二〇年代初頭にも通じる課題を投げかけている。資料9は、ブックレットに収録された論文からの抜粋であるが、一九九四年に社団法人北海道ウタリ協会釧路支部資料10は、アイヌ文化振興法に基づき同法の事業を行う法人として一九九七年に設立された財団法人アイヌ文化振1028第2部 教育 第9章 アイヌと教育  

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