北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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1 差別と学力保障への取組〈一九五五年頃〉アイヌ児童の学力調査 「頭が悪い。何をさせても駄目だ」 「勉強ができない。馬鹿だ」などとアイヌのことを卑下した。その度に、私は絶対アイヌは劣等民族ではないと、確信をもっていたが、それを実証できなかった。そして、悶も々もと苦しみ悩んだ。何とかしてみなさんに理解してほしいと願う気持ちが、大居平一郎先生を思い出したのであった。大居先生は旭川師範学校の心理学の教授で、私が教師の資格をとる時にお世話になった先生で、あの先生なら相談にのってくれるにちがいないと思った。早速母を誘って大居先生の家を訪ねた。大居先生の家は師範学校の公宅で私の家とはそう遠くはなかった。 「荒井さん、アイヌ民族は貧しく暗く陰気な下層の野荒井和子『先生はアイヌでしょ』二○一三年蛮といったイメージを一般の人は思っていますが、これは、大まちがいだ。微力だが、私なりに全力を持ってアイヌ民族を応援したい。一日も早く多くの皆さんに正しく広めたい。学力がないとは、荒井さん、荒井さんは何が原因だと思いますか」 「家庭環境だと思います」 「そうですよ。それではそれをどの様に調査をするかを考えましょう」大居先生は、私の相談を心よく引き受け、その後、何度も私の家にいらしては、冗談やら雑談で笑いの渦の中に誘ってくれた。先生がいらっしゃると、いつも愉快になったが、調査方法については何も話さない。でも、大居先生にお会いすると、開放感に浸り思ったことを何でも話せるようになり児童教育にも、笑いの人生をも学ぶことが多かった。ある時        んん   「荒井さん、どうだね。近文小児童の調査だけでは不1029

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