と反省し「百聞は一見にしかず」であるとつくづく思うのであった。相川小学校、二風谷小学校、白老小学校の三校の先生方は私たちの質問に対し心よく正直に答えてくれた。研究の要旨を次の様にまとめた。北海道各地に少数ではあるが、アイヌ児童が和人と共学している。日本民族学会及び人類学会に於いても、アイヌの研究を年ごとに盛んに行われているが、未だに明確なる研究発表がされない。アイヌ児童の学力については、学術上からアイヌを有色人種としてとり扱い、学力の優劣を区別しているが、その説を否定せねばばらない。アイヌの家屋が、五十戸も数えられる近文地域を特殊 時には、劣等視されるのである。地域として取り扱われているが、和人と何ら変わりない衣食住の生活をしながらも、昔ながらの生活を考えられ、〈中略〉近文小で在籍している三十七名のアイヌ児童がかかえている、いろいろな問題点を解決しなければならない重大な任務がある。私は児童一人一人の幸せのために個性や生活環境を調査し〝学力について〟の優劣やその原因を把握したいのである。この調査でアイヌは劣等児ではない。家庭環境によって学力の差が生じるという確信を得たのだった。その年の八月二十五日、札幌で第十四回全国教育大会があるから発表したらいいと大居先生が薦めるのだった(会場は北海道大学)。全国からこの大会に向けて研究を重ねている先生方の発表の中に到底私などは参加できないとお断りした。 「荒井さん、アイヌ民族を認めてもらういいチャンスだよ。わずか五分間だけどしなさい。札幌が会場だから近いでしょ。申込んでおきますよ」〈中略〉昭和三十年三月二十日記 1031
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