なく、国民的課題なのである。このことはすべての教科書がとりあげなければならないことを物語っている。こうした〈アイヌ民族〉記述の現状を考え合わせれば、教師の「文化的なたたかい」こそが子どもたちの正しいアイヌ観の形成に重要な役割を果たすといってもよい。それでは教科書の〈アイヌ民族〉記述を質・量ともに充実するためにはどのようにしたらよいのであろうか。それは教科書の執筆者や編集者が内なる「単一民族国家」観の呪縛から脱し、アイヌ民族の子どもたちも学習者の一員であるという意識を常に持ち続けることである。〈アイヌ民族〉記述の欠落はその子どもたちにとってみれば、自己の存在の否定に他ならない。そうした意味でも〈アイヌ民族〉記述は必要である。それもアイヌ民族の子どもたちへの励ましと自信につながるような記述でなければならない。(北海道立図書館所蔵)ここで、昨年度刊行した『アイヌ民族に関する副読本の編集方針』に従い、本書の編集にあたって目的としたことと留意したこととを説明します。1 提示する。いうまでもないことですが、信頼できる成果に基づき事実に即した叙述であることは、公教育で用いられる教材にとっての第一の条件になります。そのため本書の編集にあたっては、アイヌの歴史と文 の編集方針に照らして必要に応じ執筆者に修正を依頼し化に関するそれぞれの時代・分野ごとの専門家に執筆を依頼しました。ただし、最終的に原稿を取りまとめる際には、すべての原稿の内容を編集委員会で検討し、本書副読本の編さん〈二〇〇〇年〉本書のねらいと留意点信頼できる研究の成果を踏まえ事実に即した叙述をアイヌ文化振興・研究推進機構『アイヌ民族に関する指導資料』改訂三版 二○○六年105110
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