北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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ました。またそれぞれの専門分野のなかでいくつかの異なった説が信頼できるものとして支持されている点を記述するときには、それらのバランスのとれた紹介と対比とを心がけています。2 本書の編集の段階では「児童・生徒にわかる範囲」に視野を限定せずに考える。児童・生徒に配布する副読本の編集にあたっても可能な限り広い視野に立つことを目指すが、現時点で教材化・教育が困難だと判断される点については、指導資料の段階の記述にとどめることもありうる。日本ではアイヌ民族についての教育の経験が十分蓄積    生徒の理解を図ることができるか、試行錯誤ともいうべされていません。アイヌ民族に限らず、そもそもある民族の歴史と文化をどう教えるかについての教育の経験が蓄積されていないのです。こうした現状を考えると、まずあるべき教育の内容について十分に広い視野から考え、次いで現実にそうした内容をどのように教えれば児童・き経験を重ねる、という手順を踏むことがとるべき可能な手段でしょう。そして、編集方針の求める視野のなかで当面のあいだ教材化・教育が困難だと判断される点についても、指導資料のなかに盛り込むことによって、一般社会と教育に携わる人々との理解を深めることができます。こうしたことはやがて次の成果につながってゆくはずです。3 に付属するものではなく、独立して成立するものとしてとらえる。アイヌの歴史は、これまでもっぱら、日本の中央政府や松前藩などとの関係、つまり和人―日本国内のマジョリティーのことを、アイヌ民族に対置してこう呼びます―との関係からみて特記すべき側面について、説明されてきました。しかし、日本の政府が記録したこと、和人にとって関心の対象になったこと、和人からみて特徴的なことだけが、アイヌの歴史なのではありません。アイヌ民族にとって、長いあいだ和人は歴史上の交渉アイヌ民族の歴史を、日本史のなかの過去の一時期1052第2部 教育 第9章 アイヌと教育

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