2 産児制限に対する世論結論=農業会では当局の指示によつて三月十日までに到着した肥料を農家に配給した。或村では若し肥料資金が借りれなければ現金がないから約六割の農家が現品を戻すと申出ている。また或村ではプラオ(二千三百円)の配給切符が来たのに買える者がなくて困つている、農産物の価格は安かつたし暗も少なかつたのに肥料、農機具、衣料なんでもウナギ上りで手が出ないこんな悲惨な事態を予想した者は少かつたであろう。暗憺たる空気が農村をおつている、その罪は政府のみにあると云い切れるであろうか、終戦後農民は多くの過を冒して来た、わが国の歴史あつて以来常に最大の犠牲を強いられて来た農民が名実ともに解放されたと思い込んだ時、気のゆるみの出たのも無理とは云えない然しあのような甘さで荒廃した日本農村が立直れると思つたことは大きな間違であつた、今こそそれを切実に体得したのである、食糧一割増産……この要請は更に多くの困難と痛苦を与えるで〈中略〉重大岐路に立つあろう、農村は重大な岐路に立つている、時はなお遅しとしない、もはや寄道は禁物である。苦難の坂道ではあるが、前途にはほのの逞ましい開拓精神を呼び起し来るべき農業恐慌に備えつつ暗とインフレに力強いひとくわを報いようではないか。最近産児制限の問題が大きくとり上げられ、ラヂオの街頭録音などでも盛んに論じられています。これまでは生よ殖やせよと叫ばれ、子供は国の宝として扱はれて来ましたのに敗戦の結果、今度は産児制限だ北見地区農民同盟事務局『北見農村』六三号(『プランゲ文庫(新聞)』所収)一九四九年七月と明るい陽がさしている。先人青年の頁 紙上討論産児制限賛成論(北海道立図書館所蔵)91 〲第1節 戦後復興期の農山漁村社会
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