アイヌ語とアイヌ語地名年表６ 「伝統的アイヌ文化」を時代から切り離されたものとして固定的に提示するのではなく、アイヌ文化の歴史的な変化の流れのなかに可能な限り位置づける。その際には文化の歴史に価値の尺度を持ち込まないよう留意する。現代において「伝統的」とされるアイヌ文化の各要素は、本書のなかでは、一三～一九世紀ごろを中心としたそれぞれの時代ごとの文化として示されています。そして副読本の編集や実際の教育に際しても、そうした文化は時代から切り離された固定的なものとしてではなく、歴史的なアイヌ文化の変化の流れのなかに位置づけられるべきです。こうした叙述が必要なのは、現代に至るまでのアイヌ ねない、アイヌの人々が現在もそうした暮らしをしてい民族とアイヌ文化の歴史を自立したものとして描くためです。また「伝統的」な文化だけを教えることで生じかるという誤解、「滅びゆく」「もはや存在しない」民族だという誤った認識、さらにアイヌ民族を「歴史なき民族」とする誤解を防ぐためでもあります。７ アイヌ文化が動いてきた歴史の流れのなかに位置づける。明治以降もアイヌ民族は現に存在して、その時代その時代のアイヌの歴史と文化を営んできました。そして、日本史から独立したものとしてのアイヌの歴史の像を提示するためにも、また生活・文化の全体像を提示するためにも、近代・現代のアイヌの人々の生活を歴史のなかで叙述することは必要です。そして本書では、われわれ編集委員会が「近代・現代の文化」の項目を執筆しました。参考となるこれまでの研究などがほとんどないなかでの作業となったので、連続的・網羅的な記述には至りませんでしたが、この分野での最初の一歩としての役割を果たすことができればと考えます。近代・現代のアイヌの人々の生活を提示し、やはり1055
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