協同製作である限り、全員が統一された考え方と、団結力がなければ到底やり遂げることが出来ないので、私達は「どのような考え方で調査するのか」という問題を話しあつた。 「私達自身労働者であるから、労働者の立場にたつて、暗くてみじめな時代の背景の前で働いてきた労働者の生活を浮彫りにすることである。然も、臭いものにふたをするといつたことでなく愛情をもつて赤裸々な姿を明らかにすることである。」との考え方で出発することになつた。最初はエピソード集のような軽い昔話を集めてはと考えていた。それにしても、全く素人考へで実際に五里霧中であつた。幸いに奥山先生の御指導を得て、調べ方を知り、次第に調査も軌道に乗つ(きたのである。この仕事を始めてみると全く地味な仕事の連続で、果して郷土史は何時出来るのかという疑念につきまとはれたが、一九五四年の暮に第一集を発表することが出来て、ほつと息をついた次第である。て脱カ)実際に郷土史をやつてみて色々と教へられた。基礎資料がなくてはエピソートも昔話も宙に浮いてしまつて、何ら説得力を持たないと云うことである。基礎資料をしつかり持つことによつてエピソートが輝いてくることを知つたのである。更に色々な事件を調べて行くと、昔に起つたことが形こそ違つても現代にも同じようなことが起つているし、起つてくるということが解る。そして、それが私達自身の問題として色々と考へさせるものを与へてくれるのである。この第一集を出してみて始めて郷土史の重要なこと、是非これを中途半端なものでなくて、しつかりしたものにしなければならないと思うようになつたのである。次にいよいよ調査に入るのであるが、総て大衆討議の中で行つた。最初大きな項目を決める。例へば「炭住の歴史」を調べようということになると、更に細い調査事項を誰かゞ提案して皆んなで検討するのである。こうして方針が決まると、その方針に基いて分担を決〈中略〉1132 第2部 教育 第11章 社会教育
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