北海道現代史 資料編3(社会・文化・教育)
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こんどはもとの素直さに戻すのに大変な苦労をしてしまいます。とても敏感なんですね……」 「そうでしようね」と思わず相槌を打つてしまつた。なかなか保母たる者、難き哉である。 「でも、こんなときに反発してくる子も、かえつてかわいくなつてしまいます。こちらで反省させられちまいましてね……」と補足する保母さんの言葉からは、この仕事に携わる者の苦労と歓びとが同時に感じとられるのだつた。最後に保母さんの希望などたずねてみると、 「何よりも施設の狭いのに悩んでいるのです。この施設ですと、正規には百人足らずが精一杯、そこに現在三二○人あまり収容しているんですから……。更に欲をいえば、清住、春光台方面に各一個所新設し       できるようになつたら素晴しいんですが……」とのことていただければ理想的なんですが……。もつとも、これは町役場に要請することでしようね。そうして現在多数おことわりしている四、五歳ころの入園希望者まで収容だつた。山の人達の切なる希望で、無理矢理収容している三二○人の園児を抱いて、保母さんは思わず日頃の願いを述べるのだつた。これから十日あまりは、近く行われる学芸会の練習に保母さんは四時五時頃までもかかる由、大へんにお忙しい様子であつたのでこのへんでおいとますることにした。雨も止んだ模様、いつしか園児達は運動場にでたらしく、教室はカラツポの静けさだつた。運動場では保母さんを先頭にかけつこが行われていた。此の度院長先生から乳児院の年報なるものを創刊する私の見た保母並に看護婦北海道中央乳児院『年報』創刊号一九五四年(北海道立図書館所蔵)婦長 小川 すて 3 北海道立中央乳児院①1156第2部 教育 第12章 就学前教育・保育、子育て、児童福祉

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